001.森のすみかで鳥の声を聞いた

すっかり自粛ムードの5月の初め、森のすみかのある根の平に向かった。
根の平(ねのひら)は、山あいにある平地に根ざすという意味だと思う。
この地に植林された桧の森の一角を、トータルアシストプランの堤さんが譲り受けたのは2016年のこと。桧は伐採して住宅の構造材として活用し、切り拓いたその場所を「森のすみか」と名付けた。
わたしも何度か訪れているその場所には、2019年末にトータルアシストプランのモデルハウスが建ち、三重県古民家再生協会の拠点ができ、そしてキャンプ場としての活動も始まっている。

この写真は、写真師松原豊さんより提供です

根の平の「森のすみか」は、驚くほど眺めがいい。
手前に広がる森から目を上げていくと、四日市の街並み、伊勢平野、そして伊勢湾が一望できる。特にモデルハウスのロフト部分からの眺望は素晴らしく、眼下に広がる家並み、工場、お店、畑・田んぼ、学校、病院などなど、圧巻の風景だ。ゆったり眺めていると、この地で暮らす人々の営みや自然の恵みを、あらためて感じることができる。こんな時期だからかもしれないけれど、日々の営みについて、素直に、そして肯定的に感じている自分がいた。

新型コロナウイルス対策の影響が少なかった2020年2月には、敷地に植林が行われた。ナラ、クヌギ、モミジなど「新芽は鹿に食べられてしまうかも」と言いながら植えたそうだ。伐採して、その場所に木を植える。その循環を見て、わたしはまた、暮らしや社会について考えている。

森のすみかで、遠く眺める家並みのそれぞれに、日々の営みがあることを、わたしは想像する。料理をする人、洗濯をする人、眠る人、食べる人、テレビを見る人、音楽を聴く人、ぼーっとする人、なにもしない人、病と闘う人、笑う人、怒る人、歌う人、考える人、赤ちゃんから年配の人までいろんな人がいる。こんなことをあらためて思い巡らせるのは何年ぶりだろう…。
そして、わたし自身の暮らしや住まいについて、思い返してみる。
僕はきちんと生きているか?

トータルアシストプランは、人が暮らしていく場所を作る、家づくりの会社だ。堤さんが、森のすみかに求めているのは、こういう「考えるひととき」なのだろうと思う。

特別にと言って、堤さんがお茶を点ててくれた。
あまいお菓子を口に入れ、お茶をゴクリ、ゴクリ。お作法はわからないので、とにかく味わう。時節柄感じているぼんやりした不安を、少しだけ堤さんに伝えて、そうしたら、少し落ち着いた。快晴のこの日、窓からは気持ちいい風が入り、もう少しゆっくりしていこうと思った。堤さんは、人の話を聞くのが上手だと思う。

森のすみかに現れる鹿たちの目的は、敷地の外れにある沢だ。水飲み場になっているらしい。まずまず急な斜面を、気をつけながら降りると、その小さな沢にたどり着く。山から湧き出てきた水が、森の中に小さな小川を作っている。足元は落ち葉、見上げるとさまざまな地元の木々。
束の間の森林浴をしていると、キャンプの達人、寺尾さんが声をかけてくる。
「ここはいい遊び場になるなあ」と、沢のあたりを二人でウロウロしながらキャンプ談義。森のすみかのキャンプ場計画を進めている寺尾さんは、内装の職人だ。自慢の手作りキャンピングカーの話が止まらない。

並んで景色を楽しみながら、アイスキャンディーを(またも特別に)いただく。たわいもないおだやかな時間。この連休は恒例の家族キャンプに行けなかったけれど、お父さんだけキャンプに行ったような、そんな時間。

森からはウグイスの声が聞こえてくる。わたしには「また来てね」と聞こえた。来年のゴールデンウィーク、わたしはどうしているだろうと、ちょっと前向きに考えた。

この連載は、グラフィックデザイナー橋本純司が担当してトータルアシストプランとその周辺のアレコレをレポートしていきます。

トータルアシストプランの森のすみかモデルハウスは、
新型コロナウイルス感染症対策の影響もあり、当面、予約制での見学のみ可能です。
住まいづくりのご相談と合わせてご予約ください。

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トータルアシストプラン株式会社 TEL059-361-1616