003.ガラージュメゾンIKUWA

トータルアシストプランの堤さんが賃貸アパートを建てると聞いて、ちょっと驚いた。
木を大切にした戸建住宅のイメージが強い堤さんが、アパートの設計をするイメージがなかったからだ。

2020年の年末、その一棟目が完成したと連絡をもらって、カメラマン松原さんと二人で記録写真の撮影に訪問した。
完成したアパートの名前は、ガラージュメゾンIKUWA。
フランス語で「ガレージのある住居」の意味で、その名の通り各部屋の1階は、電動シャッター完備のガレージスペースになっている。大型のSUVが駐車可能な広いガレージには、二階の居住スペースへ入る玄関があり、手洗いのシンク、工具を収納できる多孔ボードが設置されていて、車・バイク好きはもちろん、釣りやキャンプなどのアウトドア派のココロをくすぐる洗練された空間になっている。打ちっぱなしコンクリートのシンプルで機能的、スタイリッシュなガレージは、何かが始まる予感のする空間だ。

私は十八歳の時、初めてアパートで暮らし始めた。木造二階建ての学生アパートは、畳の6畳間、和式のトイレ、その当時でも古かったガス釜のお風呂。もう三十年も前になる家賃三万円の初めての一人暮らしは、今思えば恥ずかしくなるほどに一人で暮らしていく喜びと、自由を手に入れた気負いで、テンションが上がっていたことを思い出す。楽しいことはもちろん、悲しいこと、苦い思い、たくさんの出来事があった。ここには書けないことばかりだ。それから私は、七つのアパートで暮らした。

ガラージュメゾンのベランダから見えるのは、四日市市街の景色だ。私はこの街に暮らしたことはないが、五十歳目前のおじさんになった今、ここから見える景色は、あの頃とはまた違った大切なもののように思う。たくさんの人が暮らすこの街で、さまざまな人が日々暮らし、思い、働き、食べ、笑い、泣き、ぼんやりしたり、考えたりしている。少しは世の中のことが見えてきたということか、と思ったけど、おじさん特有のセンチメンタルな気分になっているだけだと気づく。

若い自分に戻ったつもりでこの景色を眺めると「これから何をしようか」などと、前向きな自分がいて少し恥ずかしい。けれど、この景色を眺めるであろうこの部屋の住人は、きっとワクワクするはずだ。
ここから始まる新生活は、大切なものになるはずで、堤さんの性格からして、その若者の大切な何かを想像しながら、このアパートを企画して、設計・建築をしたことだと思う。

ガラージュメゾンはワンルームだが、リビングの上部にロフトがある。厚さ30ミリの国産杉の無垢の木を使ったいいニオイがする寝床。対面式で使い勝手の良さそうなキッチン、コンパクトな水回り、アパートなのに設置された勝手口(ガレージ内の玄関だから…)。これは、まさしく秘密基地だ。
昔のアパートからは隔世の感のあるこれらの設備は、この場所からのスタートを彩ることになるはずで、暮らしやすさや使い勝手はもちろん、こだわりの特徴が多いこのアパートは、きっと大切な1ページになることだろう。私もここで一人暮らしがしたいなあと出来もしないことを口にすると、松原さんは笑った。

感染症とともに生きる日々の中で、それぞれが生活や仕事に向き合っている。そんな今、新生活をスタートさせることは、昔の一人暮らしとはまったく違うものだろうと思う。このアパートを作った堤さんの思い、これからここで暮らす人のことを思い浮かべて、毎日を丁寧に、目の前のことをしっかりと、そんな当たり前のことを大切にしたいと思った。


トータルアシストプランのアパート作りは二棟目がスタートしている。本来の木造住宅建築と同じように、住まう人のことを思い、考え、建築されている新しいアパートは、ウォークインクローゼット付きの寝室がある40㎡もある1LDKで、また違う特徴を持った住まいになるそうだ。また完成の折には、このコラムで紹介したいと思う。

これからも続いていく毎日は、どんなものになるだろう。十八歳の時、古いアパートで何もわからないまま夢見た世界とは、ぜんぜん違う場所に自分はいる。けれど、こうなるべくしてここにいるような感じもする。この新しいアパートで暮らす人々の、この街で暮らす人々の幸せを願う気持ちになった。もちろん、自分も含めて。

トータルアシストプランのアパートは、宣伝などをしていません。
詳しいお話を聞いてみたい方は、トータルアシストプランへお電話でお問い合わせください。
※ガラージュメゾン生桑は、2021年早々に満室となりました。入居者はなんと、二十代、三十代、四十代、五十代の各世代お一人づつです。

写真提供:松原豊(office369番地) 文章:橋本純司(橋本デザイン室・一期堂)

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