004.古民家を未来への発信基地に

いなべ市藤原町西野尻にオープンした「okudo中村舎」さん。
ここは元々「中村医院」という産院だった建物で、いなべ市に寄贈され、TAPの堤さんが代表理事を務める三重県古民家再生協会が仲介して、いなべ地域の発信拠点として「イナベキカク」山崎さんが管理運営されています。
2021年6月のオープン前にお邪魔させていただきました。

地域の集落の中でもひときわ大きなこの建物は、築150年の堂々たる古民家。大きくて立派な門をくぐると、自分の子供の頃を思い出す、古めかしい外観が出迎えてくれます。
勝手口からお邪魔させてもらうと、「okudo」の名前の通り、大きな「おくどさん」が台所の中心に鎮座。玄関先から続く大きな土間、長い間誰も入らなかっただろう屋根裏、丁寧に使われてきた生活に必要な品々、いい色に仕上がった建具や階段。ここにあるものは、暮らしてきた人々の息づかいを刻み込んだものたち。やさしい匂い、落ち着いた空気がこの建物を包んでいます。

年季の入った古民家の「中の間」や「ごはんの部屋」で(僕の実家ではこう呼んでた)、中村舎メンバーの若い人たちが通信回線を使って仕事をしておられる。そういう世界に慣れていないオジサンには、とても新鮮な感じがする。昔からある座卓に、PCを置いてイヤホンマイク。どこか遠くのお仕事相手との、軽やかなやりとり。感心と尊敬と羨望の気分だ。

「okudo中村舎」は、コワーキングスペースや会議室・レンタルスペースとして貸し出したり、いなべの文化を体験できるイベントを開催していくそう。地域の拠点として、また、世代を超えた交流の場として、長く使われてきた古民家が再生している。ただ使えるようにした古民家ではなく、いかに活用していくかで、本当の再生かどうかが決まると思う。古民家再生をめざす協会にとって、なんとも喜ばしく誇らしい場所。案内していただいた山崎さんの楽しむ姿勢が、この場所のいい雰囲気を作ってると思う。

30年前の僕は、田舎での暮らしをやめて、町へ出て働いた。そして今50歳を目前にして、今どきの働き方と古民家に刻み込まれた息づかいに触れて、「僕はこれまでどうだったんだろう」と、後悔のような、懐かしいような、そんな気分にさせる。働くということ、日々を暮らすということ、家族のこと、異文化のこと、どこかの誰かのこと。この古民家は、ぐるぐると、なにかを考えさせる場所。

広い庭では山崎さんの愛犬が遊んでいる。庭の奥にある蔵には、大切に使われてきた道具たちが整然と片付けられている。たくさんの人々がこの古民家に関わり、暮らし、生きてきたことを実感できる見学でした。

さよならをした帰り道。「オジサンだからそんなこと思ったんだ」と思い至り、「いま」を古民家で過ごしている若い人を思い浮かべて、そして、未来を思った。この古い建物で何に気づき、どんな未来を生きるのだろう。どんな人生を歩むのだろう。
やっぱり古民家っていいな。またお邪魔して、ゆったり考え事をしたいと思った。
みなさんもぜひ訪ねてみてほしいです。


okudo中村舎さんのご案内
場所:いなべ市藤原町西野尻
営業日時:火曜日~土曜日 9:30~17:00(L.O16:00)
定休日:日曜日・月曜日
連絡先:0594-37-4014
イナベキカクwebサイト https://iiinabe.com/


文章:橋本純司(橋本デザイン室・一期堂)

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